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                                【回想録「6」】  
                                
                                   
                                
                                
                                  
                                    
                                      学校から家に帰ると、どこからかカチカチという拍子木の音が聞こえてきた。紙芝居である。今はテレビという文明の利器があるためか紙芝居は廃れてしまったが、当時、子供の私にとっては楽しみの一つであった。
                                       
                                       
                                      弁士のおじさんは紙芝居をしながら飴を売って、その売り上げを生活の糧にしていたようであった。クルクルと巻いた形の飴で正式名称は忘れたが、1個5円であったことは記憶にある。しかし、私の家は貧乏であったため、その5円の小遣いがもらえなかった。仕方なく、手ぶらで紙芝居を見ようとすると弁士のおじさんから「只見は後ろだよ」と言われた。私や弟、妹はいつも後ろだった。そもそも5円というお金は私達にとって大金であり、当時は約一月分の小遣いに相当したのである。  
                                      自転車の荷台に積まれた小さな芝居小屋は子供の夢を運んでやってきて、そして私たちの成長とともにいつの日か消え去った。  
                                       
                                      ある日母親は、こともあろうに、この私をNHKの少年少女合唱団に入団させようとしたことがあった。母親は女学生時代に皇族や貴族の前で合唱をしたことがあり、いまでもその時の写真を自慢げに見せる。
                                       
                                      そのような母親だから、なんとか私を少年少女合唱団に入団させ、将来は歌手としてデビューさせたいという夢があったのかもしれない。もし私が歌謡界にでも入っていたら、近頃流行っている国籍不明の邦楽など世の中に出現しなかったに違いない。字幕スーパーが出なければその歌詞さえ聞き取れず、何を歌っているのか、さっぱり分からないような音楽は、日本の文化を破壊すると思うのである。
                                       
                                       
                                      しかし母親の夢破れ、少年少女合唱団からは「現在募集しているのは女子のみです」という返答があったそうだ。おそらく体よく断られたのであろう。  
                                      その後、母親が自慢する私の美声は小学校の学芸会などで披露されることになる。ところが音楽の時間、面白くないことが一つあった。それは器楽合奏の時、私はいつまでたっても小太鼓で、女性教師のお気に入り(そう思っていた)が大太鼓を叩いていたことである。
                                       
                                      それでも子供ながらカスタネットや縦笛よりも優越感があったのは事実である。  
                                      このような文章を書いていると、どこからか「アテネのまちまちトルコの兵隊すすむ」とトルコ行進曲が聞こえてくるような気がする。 | 
                                     
                                  
                                 
                                
                                  
                                    
                                      
                                       
                                        
                                      【パッチで遊ぶ】 
                                       
                                       | 
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                                      お気に入りといえば女性教師と私の家族とでスズラン狩りにいったことがあるから、クラスの生徒から見れば、私も女性教師のお気に入りの一人であったのかも知れない。  
                                       
                                      女性教師は1週間ほど旅行でいなかったことがあった。そのとき代わりとして担任を受け持ったのも同世代の若い女性教師であった。 
                                       
                                      この先生は小学校4年生から我がクラス担任になるが、意外な別れ方をしなければならないことになる。  
                                      やがて、クラス担任の女性教師が旅行から帰ってきた。 | 
                                     
                                  
                                 
                                
                                  
                                    
                                      授業が始まるとき、生徒全員にお土産の飴を1個ずつくれた。飴を味わうのは短い時間であったが、楽しいひとときだった。そして、たいへん美味しかった。
                                       
                                       
                                      今でも、思い出として残っているのは、楽しかったことや辛かったこと、そしてお金の事や食べ物の場合が多い。これも貧乏であったからだと思う。貧乏がべつに苦にはならなかったのは何故だか分からない。  
                                      欲しい物があったが、はじめから買ってもらえないと思っていたから、ねだるだけ無駄だと考えた。男は無駄なことはしないものである。 
                                       
                                      その後、一番欲しかった自転車を買ってもらえたのは、私が小学校5年生になってからである。それまでは爺ちゃんの自転車を乗り回した。27インチというサイズは子供の私には非常に大きく、ペダルに脚がとどかないため横乗りで乗った。
                                       
                                       
                                      ようやく買ってもらった自転車は、近所の子供達で交代して乗って遊んだ。当時はいくら自分の物であっても独り占めは許されなかったし、皆で遊ぶことにより仲間外れにならず自分の立場を強化し交流を深めることにもなったのである。 | 
                                     
                                  
                                 
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